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てっしゅう
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novelistID. 29231
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「夕美」 第二話

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荷物をもって出掛ける前の日晴樹を手元に呼んで夕美は言い聞かせた。

「晴樹、お姉ちゃんね明日から新しい仕事先に住み込みで行くことになったから、傍に居てやれないの。ゴメンね。伯母さまと叔父さまの言うことよく聞いてお利巧にするのよ。解った?時々遊びに来るから我慢して頑張るのよ」

もう晴樹は泣いてしまって何も言えなくなっていた。
来年から小学校に入学する晴樹にはまだ姉の言葉が十分には飲み込めなかった。何度も何度も背中をさすって、頭を撫でて自分も涙で霞む晴樹の姿に愛しさだけが胸を締め付けてくる。今夜は一緒に寝て最後の別れをしようとそのまま布団に入った。


「夕美、心配しないでいいから向こうさんで好かれるのよ。あなたの態度次第で父親の信用が傷つくんだからね。良く覚えておいてよ」

「お義母さまご心配には及びません。晴樹のことくれぐれもよろしくお願いします」

「今日はお義母様って呼んだのね・・・あなたも大人ね」

「そんな・・・」

「早くいきなさいよ。遅刻は恥ずかしいことだからね。それからこれは主人から頼まれたものだから渡すよ。何かの本だけど勉強になるらしいからよく読むのよ」

「はい、ありがとうございます。お義父さまにもよろしくと伝えて置いてください」

「解ったわ」

晴樹が雅子の影に隠れてずっと夕美の姿を見つめていた。目にいっぱいの涙をこぼさないようにしながら・・・
町並みの花ノ木はもう枯葉を落とすようになっていた。
作品名:「夕美」 第二話 作家名:てっしゅう