慟哭の箱 1
マンションに帰り着くと、11時を回っていた。もう寝よう、と鍵を開ける。暗い玄関に立ち、清瀬はひとの気配を感じた。
「・・・須賀くん?」
旭か?真っ暗な廊下に、確かに誰か立っている。その影が動いたかと思うと、身体に衝撃が走った。
「!」
首を締め上げられ、壁に押し付けられた。苦しい。瞬時に頭に浮かんだのは、旭を殺し損ねた誰かの襲撃だった。
「ぐっ・・・」
強い力で締め上げてくる。酸素を求めて喘ぐ清瀬の耳に、地獄から轟くような低い声が囁かれた。
「おまえは あさひの てきか」
誰だ。尋ねようにも声が出ない。
「おまえは旭の敵か」
繰り返す声とともに、締め上げてくる力が強くなる。
「覚えておけよ。敵ならば容赦はしない」
気が遠くなる。犯人かもしれない。旭は無事か。思考が闇に、ばらばらにとけていく。清瀬はその場に崩れ落ち、それきり意識を失った。
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