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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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慟哭の箱 1

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雨夜



雨が降っている。暗闇をぬらす、冷たく激しい雨。夜の中、喧騒の届かない山の中。ぐっしょりと湿った草の上に、物のように横たわっている男女。激しい雨にけぶる景色の中に、それを見下ろす影があった。

「・・・やったね」
ある者は喜びをかみしめ。

「で、でも、こんなことしたら・・・許されないよ・・・どうしよう・・・」
ある者は恐怖に震え。

「・・・こんなことしたって何も変わんないよ。苦しみが増えるだけじゃないの?」
ある者は諦観に目を伏せ。

「・・・どうでもいいや」
ある者は無関心に返す。

様々な感情が交錯し、雨の中に消えていく。雨が轟音となってあたりを包んでいた。

「心配ない」

一際冷静な声が響き、ぴんと空気が静まり返った。


「・・・俺がみんなを護る」

絶対的な自信に満ちた声だった。一同はその声に安堵する。


「このことは俺たちだけの秘密だ」


ここは暗い箱の中。
外側からは決して開けられない、そんな悲劇の話。




作品名:慟哭の箱 1 作家名:ひなた眞白