慟哭の箱 1
雨夜
雨が降っている。暗闇をぬらす、冷たく激しい雨。夜の中、喧騒の届かない山の中。ぐっしょりと湿った草の上に、物のように横たわっている男女。激しい雨にけぶる景色の中に、それを見下ろす影があった。
「・・・やったね」
ある者は喜びをかみしめ。
「で、でも、こんなことしたら・・・許されないよ・・・どうしよう・・・」
ある者は恐怖に震え。
「・・・こんなことしたって何も変わんないよ。苦しみが増えるだけじゃないの?」
ある者は諦観に目を伏せ。
「・・・どうでもいいや」
ある者は無関心に返す。
様々な感情が交錯し、雨の中に消えていく。雨が轟音となってあたりを包んでいた。
「心配ない」
一際冷静な声が響き、ぴんと空気が静まり返った。
「・・・俺がみんなを護る」
絶対的な自信に満ちた声だった。一同はその声に安堵する。
「このことは俺たちだけの秘密だ」
ここは暗い箱の中。
外側からは決して開けられない、そんな悲劇の話。