小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

お酒のお話 1

INDEX|2ページ/3ページ|

次のページ前のページ
 

1.僕が酒好きになったワケ 前編

日本では未青年の飲酒は認められていない。
18歳はもちろん未成年だ。
でも酒屋でバイトをするからって飲酒するわけじゃあない。
酒屋はお酒を売るところであり、呑むところではない。
ところがだ。
最初から自分はこの仕事を舐めてかかっていたのかもしれない。
お酒を飲めないということはすなわち、
商品知識が著しく欠けた状態であることと同義だったのだ。

考えてみてもらいたい。
お菓子屋に行って店員に「おすすめは」と聞いて
「さぁ?」と答えられたら。
「このチョコはビターかスイートか」と聞いて
「食べたこと無いんでわかりません」
なんて答えが返ってきたとしたら。

甘いもののことなら簡単に答えられるんだけどなー、
などと考えながら接客している自分。
自分の目の前にはまさにその「おすすめは」を問うてくる客が。
初めてきたお客さんで、やたら専門用語を使いたがっている。
馴染みの常連さんたちはいつも買っていくお酒が決まっててイイ。
いつもどおりの流れ作業で済むから楽だ。
しかし時折現れるいわゆる「一見さん」は要注意なのだ。
偶然店に立ち寄る人も中にはいるのだが、
うんちく披露でもしたいのか店員を呼びつけてあれこれ聞いてくる人もいる。
この一見さんは後者だな・・・
話が込み入ってくる前に店長を呼び、引き継いでもらう。
「それでしたらこちらが・・・」などと言いながら
店長たちは店の奥へ入っていった。

ほっ。
一息つけた。
高校までごく真面目な生活(成績は普通だった)を送った自分にとって、
お酒は興味こそあれど未知の分野だった。
幼少時に親が飲むビールをなめてみたことがあるぐらいのもので、
昔は倉庫だったと言うこの店に並ぶ数百種類に及ぶ酒類のことについては
さっぱり何も知らないのだ。
まぁ、わからんこと言う客は店長に任せればいいや。
この時はその程度にしか思っていなかった。

しばらくして店長たちが戻ってきた。
一見さんの手には酒の瓶が。
ずんぐりしたボトルのそれを買って、一見さんは満足そうに帰っていった。

作品名:お酒のお話 1 作家名:榊原 始