お酒のお話 1
ほくほく顔の一見さんが帰った後、自分に店長から指示があった。
「竹鶴、というお酒を一本持ってきてごらん。制限時間5分。」
せ、制限時間?テストですか?
ワケもわからないまま広い店内の探検を始めることになった。
倉庫として使われていたこの広い店内を歩くには、
まさに探検という言葉がちょうどいいように思えた。
竹鶴・・・漢字だから日本酒かな?
店の奥の日本酒が陳列されているコーナーへと歩き始めたのだった。
結局「竹鶴」は見つけられなかった。
何度も何度も日本酒コーナーの棚を探したが、どこにもないのだ。
常温の棚、冷蔵の棚を何度見回してもお目当ての品はなかった。
念のためと思い焼酎のコーナーも見ていた。
時間切れを知らされ、店長のもとへ戻り、その旨を伝えた。
店長はなんとも言えない、なんとも説明しがたい表情をしていた。
「見つからなかったってことは、竹鶴ってお酒の事知らないわけだよね?」
と店長。
そう、ですね。
何回も探したけど見つからなくて。
新しい日本酒ですか?
ここで店長が大きくため息。
え?何?
「あのね。まず竹鶴は日本酒じゃないの。」
あら、そうでしたの。じゃあやっぱり焼酎だったのかしら?
ぐらいにしか思わなかった。
「竹鶴はウィスキーです」
・・・えぇ?