新撰組異聞__時代 【中編】
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___我らは、尽忠報国(※ 君主に忠義をつくし、国家に報いること)の士にございます。貴藩と志を共にし、身命を擲って働く所存。
京都守護職、会津藩主・松平容保を前に、近藤勇は声を張った。
芹沢鴨も共にいたが、口を挟む隙はなく、容保は一度も芹沢に声をかける事はなかった。その裏に、歳三はいた。
口上を用意し、芹沢にしゃべらせるなと念を押し、勇を会津藩本陣・金戒光明寺に向かわせた。策は見事成功した。
この時から、二派は同じ敷地内で少しずつ離れていく。
「これで、形はできた」
「ん?ああ、そうだな」
膳の上で、魚の焼き物と格闘している勇が生返事をした。
「とりあえず、役目だが…」
「おっと…」
「………」
箸で突き、焼き魚が膳から落ちかける。
「で、なに?」
「…あんたには、局長をやってもらう。つまり壬生浪士組の主だ」
「お前は、トシ」
「副長だ。総司と藤堂、永倉や斉藤は組長…ってのはどうだ?」
「お前に任せるよ」
「それから、俺はあんたを近藤さんと呼ぶ」
「そりゃいいが、芹沢たちが黙ってないぞ」
案の定、黙ってなかった。
芹沢は「ならば、わたしも局長だ」と宣言した。しかも側近である新見も局長として。
そしてもう一人。
「___私も副長?」
「局長が、三人もいるんだ。副長も二人いてもいいだろ、山南さん」
三人の局長に二人の副長。
ここに、会津藩京都守護職お預かり、壬生浪士組は誕生する。
作品名:新撰組異聞__時代 【中編】 作家名:斑鳩青藍