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新撰組異聞__時代 【中編】

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 将軍上洛から数日後、その男は数人の男たちと料亭にいた。
 「ところで、例の浪士隊どうなったんだ?」
 「江戸へ帰ったそうですよ」
 「ほぅ」
 「少数は、残ったそうですけどね。ま、我らの相手ではありませんよ」
 「おいおい、騒ぎを起こすなよ。血気に逸り、朝敵となったら…」
 「大丈夫ですよ。我らの目的は尊皇攘夷、朝廷は理解ってくれます」
 「幕府は、そうは思わないだろう」
 「桂先生、いざとなれば我が長州は___」
 「しっ」
 小五郎は、素早く周囲を見渡して言葉を遮った。何処で、誰が耳を研ぎ澄ましているか理解らない。ここ最近の長州浪士の動きを、幕府が放っておかない。故に、浪士隊を結成させたのだと、小五郎は睨んでいる。
 「先生?」
 「とにかく、慎重にな。それで、その残った少数は?」
 「会津藩御預かりとなったそうです。壬生浪士組と名乗ってますが」
 「江戸から来た浪士が、京を護るか…」
 「何か?」
 「いや、懐かしい男を思い出したのさ。試衛館と云う道場の門弟でな。意気投合して、今度酒を呑もうと約束したのだが、どうしているなと」
 汗を流し、門弟たちと竹刀を交わしているだろうか。もう一度江戸で、会えるだろうか。彼に。
 何故、江戸に戻れると思うのか、小五郎には理解らない。今の長州の現状では、それどころではないのに。だが、その懐かしく思い浮かべた男は同じ京にいた。
 道は二つに分かれ、決して交わる事のない道。二人の男の運命。
 八木邸の庭先で、開花間近の桜を見上げる男に総司は近づいた。
 「___もうそろそろですね」
 「近藤さんは?」
 「酔って寝ちゃいました。よほど嬉しかったんでしょうね。しまいには泣き出すんですから」
 「前は、肩すかし食らったからな。大名の殿様に会えるなんて、そうそうねぇ」
 「芹沢先生の方は、おもしろくなかったようですよ。難しそうな顔をしてましたから」
 「放っておけ。俺の狙いは近藤さんが目立てばいい。容保公に、この男はやれると思われれば大成功だ。その通りになっただろう?」
 「さすが、土方さんですね」
 総司は、にっこりと笑った。