小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

新撰組異聞__時代 【中編】

INDEX|7ページ/17ページ|

次のページ前のページ
 

          *************************************
 文久三年と云う年は、初めの激動の年になる。
 漸く日も温み、月は三月。
 「トシ〜っ!!」
 突然の大声に、歳三は眠い目をこすりがら何事かと障子を開けた。
 その眠気も、廊下を走ってくる勇に覚めた。
 「来るぞ」
 「は?」
 「来るんだ」
 嬉しそうに云う勇に、理解不能である。またも朝帰りして、こっちは眠くて仕方がないと云うのに。
 「勝ちゃん、手短に云ってくれないか?」
 「大樹公が、上洛される」
 「それで?」
 「それでって、お前なぁ…」
 「ここに来るわけじゃねぇだろう。警護と云ったって、あの清河に計画はふっ飛んだのも同じだ。上からは何も云ってこねぇし、形だけの俺たちに将軍が喜んでくれると思うか?このままじゃ、俺たちもこの町にいる不逞浪士のようになるぜ」
 「では、どうすればいいと」
 「手はあるぜ」
 「手?」
 「黒谷金戒光明寺さ」
 「寺?おい、仏に祈願するつもりか?」
 「勝ちゃん、将軍もいいが他の人間の情報も頭にいれておいてくれよ…」
 こめかみを揉みながら、歳三は溜息をついた。
 
 金戒光明寺は、黒谷にある浄土宗の寺院である。知恩院とならぶ格式を誇る浄土宗の大本山の1つである。今その金戒光明寺は、会津藩本陣となっていた。
 「ちょっと待て…」
 「何だ?」
 「会津藩って、確か藩主の容保公は…」
 「京都守護職」
 「…もしかして直談判しようっていうんじゃ…」
 「ああ」
 「おい、相手は大名だぞ。大名」
 歳三の顔は、それがとうしたと云う顔であった。