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新撰組異聞__時代 【中編】

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 そんな京の町で、三人の男が同じ場にいた。島原遊郭の、それぞれ違う部屋に。
 「今日は、芹沢はんはおらへんのやな」
 「酒に酔ってしまわれてな…」
 「まぁ、それはえろう難儀どすなぁ。近藤はんも大変やわ」
 「そうかな」
 「人がいい御人や。うちの目ぇに狂いはおまへんな」
 金銀の揺れる髪飾りを揺らし、郭一と云われる妓がピタリと勇に躯を寄せていた。深雪太夫である。
 「君は、芹沢さんが好みだと思ってたよ」
 「そう見えるだけどす。うちは客をもてなしてるだけや。うちはもっと強い男はんが好きどすえ」
 だから、理解らない。
 勇は、深雪が相手してるなど思っていなかった。歳三に引っ張られるまま、芹沢なしでまたここへ来てしまったが、彼女を呼べるような大金はなく、他の妓を指名したつもりだった。彼女の云う強い男とは誰だろう。
 「近藤さん、他の女は初めてどすか?」
 「いや…」
 「ならそんなに堅くならんと、うちの事が嫌いなら下がりますえ?」
 「いや、…じゃ…ない…」
 「?」
 「嫌いじゃない」
 勇は、無意識のうちに深雪を抱きしめていた。
 そんな勇のいる部屋から少し離れて、歳三は東雲といた。
 「近藤さん、うまくいってるかな」
 「大丈夫ですやろ。ここは郭どす。子供ではおまへん。あんじょう、やってます」
 「東雲」
 「何どす?」
 「今度、嵐山へでも行くか」
 「ええどすな。秋には紅葉が綺麗でっしゃろう。連れて云ってくれはります?」
 「ああ」
 例え嘘でもいい。この郭の外から出られる事がなかったとしても、夢を見る事はできる。この男と一緒に。
 深雪も東雲も、そう思いそれぞれの男の胸に抱かれた。
 そして、もう一人の女もまた___。
 「…お帰りにならはるん?」
 「ああ」
 「また逢うてくだはる?」
 「そのうちにな」
 「きっとどすえ?山南はん」
 「今度は土産をもってくるよ、明里」
 山南はそういって、郭を出た。山南敬介___お互い哀しい別れをする事になるとは、彼も明里もこの時は知らない。