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新撰組異聞__時代 【中編】

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 本陣中庭に、浪士たちが集められたのはその日の夜だった。
 いよいよ、命が下る。誰もが、そう思っていた事だろう。その時までは。
 「諸君、我々は漸く京に辿り着いた。そこで、私はここに宣言する。我ら将軍警護に非ず。尊皇攘夷の元、帝配下に就かん」
 当然、場は騒然となった。
 「土方さん、これって…」
 「やっぱり、東雲の云った事は本当だったか」
 清河をきつく睨みながら、歳三は唇を噛んだ。
 そんな彼を代弁した者がいた。
 「話が違うぞ!清河」
 「君は…、芹沢くん」
 「初めから気にいらない男だと思っていたが、やってくれるものだ。従えんな」
 「ぶ、無礼な…」
 「無礼?お前こそ何様だ?我らは我らのやるようにやる」
 「私も、芹沢さんの云う通りです」
 「近藤くんまで…」
 まさか反発者が多数出るとは思っていなかったのか、清河の顔は気色ばんだ。ここに彼の野望は頓挫する事になるのだ。
 当てにしていたあの人物も、露見したと知るや会う事を拒み、彼は京に残る派を置いて江戸へと戻る事になる。
 「…とは、云ったものの困ったな」
 「近藤先生?」
 「幕府の後ろ盾をなくしちまったからな」
 歳三が、自嘲気味の笑みを浮かべる。
 「トシ〜」
 どうしようと涙目の勇に、歳三はこれから考えるさと冷たい。
 京残留は、歳三たち試衛館派、芹沢鴨たちの水戸派、殿内以下、根岸友山一派などで、が京の壬生村に腰を落ち着かせる事になるが、根岸派は直後に脱退、結局二派が残った。
 「あのう〜、手前たちの家を使はるんで?」
 「文句があるのか?」
 「いえっ…そ、そんな事は…」
 壬生村郷士、八木源之丞は芹沢に睨まれて竦み上がった。以後、西本願寺に移るまで八木邸ともう一つ向かい合う前川邸は浪士隊の屯所になるのである。