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新撰組異聞__時代 【中編】

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 京到着から数日後、これといって上からの命令はなく、歳三と勇は芹沢に誘われるがままに島原に向かった。
 この時、島原がどういう所か勇は知る由もなく、後にせっせっと通う事になるとは思わずに大門を潜った。
 「トシ…」
 「何だ?」
 「ここ、遊郭か…?」
 「見りゃぁ理解るだろう。江戸の吉原、京の島原、大阪の新町、三大遊郭の一つだぜ」
 「随分…詳しいな…」
 「ま、今の俺たちの身分じゃ花魁は買えないが」
 これまで浮き名を流してきた歳三でも、部屋を貸し切ってとまでいかなかった。それを、芹沢は強引に部屋を貸し切り、宴が始まった。
 勇はと云うと、完全に固まったまま。
 「御武家はん、関東から来はったのやろ?ここでも、えろう騒ぎどすえ」
 「あ…あぁ…、そうか…ははは…」
 「うちに、関東の話聞かせておくれやす」
 「あ、え…?ああ…」
 「嬉しいわぁ」
 助けてくれと横目で見るが、歳三はすまして杯を傾けている。
 要するに、彼は女性に慣れていた。資料によれば、かなりもてた上にそれを証明するものが郷里の多摩に届けられたという。
 中には、芸者や舞妓からの恋文の山。
 「おお、来たか!深雪太夫」
 一人の花魁が金襴の打ち掛けをサラリと引いて現れた瞬間、勇の顔が釘付けになった。
 「そなたはその郭一と聞いてな」
 「恐れ入ります。芹沢はんどしたな。深雪と申します。以後お見知りおき下さいませ」
 「近藤くん、君たちも好きにやってくれ」
 はははと上機嫌の芹沢に、勇は固まったままだった。後に、この深雪太夫が勇によって身請けされ妾となるのは数年後の事である。