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新撰組異聞__時代 【中編】

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 彼らは、市中見回りに来ていた。
 遠巻きに人々が見つめる中、向こうから一人の町人が歩いてくる。最初に気付いたのは、総司だった。
 頬被りに、篭を背負い、ごく普通の町人。それなのに何処か何かが違うと、総司の勘が教えている。不逞浪士とは違う何かを。
 歳三を見ればいつもの彼で、気付いたのはどうやら総司だけのようだった。
 「総司」
 「え…」
 「大丈夫か?」
 「何をです?」
 「大丈夫なら別にいい」
 彼は彼で、何かに気付いている。
 ___変な人だな。
 総司は、ふっと笑って軽く咳をする。
 思わず口に当てた手拭いに血が付き、それを懐に戻すのを歳三は見逃さなかった。
 嫌な予感がする。
 歳三の顔は、厳しいものになっていく。
 そしてそれは、的中する事になるのである。
 側にいる者が、消えていく予感。
 「帰るぞ」
 「え、副長。もう?」
 羽織の袖と、束ねて結んだ髷の先を肩で揺らして歳三は屯所への道を進む。
 鬼にならねば、不安に襲われる。敵には勝てない。
 逃げはしないが___、
 『士道不覚悟』
 誰かの声が聞こえた気がして、歳三は軽く笑む。
 ___なってやろうじゃねぇか、鬼に。
 小五郎が見上げた空を、歳三も見上げるのであった。