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正常な世界にて

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【第13章】



 自宅のドアを開けると、飛びこむように中へ入る私。そして、玄関に靴を乱暴に脱ぎ捨てると、トイレへ全速で向かう。とてつもない吐き気が、私を襲っているのだ……。
「ああ、おかえりなさい」
母がキッチンから顔を出してきたが、それに返事する余裕は無い。
トイレに駆け込んだ私は、カギをかけることもなく、洋式便器に顔を下ろした。そして、
「ぼぉえ〜〜〜!」
勢いよく嘔吐する私……。ギリギリセーフだね。


「どうしたの!? 具合が悪いの!?」
トイレの外から母の声が聞こえる。カギがかかっていないことに、すぐ気づいたらしく、母がドアをバタンと開けてきた。状況が状況とはいえ、一声かけてほしかったよ……。
「……近所でちょっと、気持ち悪いのを見ちゃって。……猫の死体だったと思う」
正直に話してもよかったけど、根堀穴掘り質問攻めにされるのが嫌だから、とっさにごまかした。
「嫌ねー。この辺りで最近増えてるらしいから……」
「そ、そうなんだ」
「物騒だから、アンタも気をつけなさいよ?」
そういえば、猫の死骸があちこちで見つかっているという話を、先生がしていたね。交通事故ではなく、無駄に残酷な感じで死んでいたそうだから、物騒極まりない……。


 吐き気が収まった私は、風呂と夕食を済ませる。そして、宿題を後回しにした状態で、ベッドでゴロゴロ寝転がる。ちなみに、ここから寝落ちしてしまう失敗は、何度もしているよ……。
「どうすればいいんだろ……」
高山さんのことで悩まずにいられない私。仲直りをしたい。坂本君も大事な存在だけど、高山さんもそうだ。来週の期末テストが終われば、夏休みはすぐに訪れる。大学受験があるから、2年生の夏休みが、実質高校最後の夏休みだ。三人で満喫したい。
 天井を見上げつつ、良案を考える。だけど、なかなか思い浮かばなかった……。言い方は悪いけど、私も高山さんも普通の人とは違い、発達障害者と精神障害者だ。だから、普通によくある仲直りの方法では、解決が難しいだろうね。まずは、彼女のことをきちんと知り、できるだけ理解してあげようと思う。
 坂本君から聞き出せることは、もう既に知っている。当てがある人といえば、高校の先生や彼女の家族だろう。だけど、簡単には聞きだせないだろうし、この行動を彼女が知れば、もっとまずいことになる……。

作品名:正常な世界にて 作家名:やまさん