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正常な世界にて

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 他の知っていそうな人を考え始めたところ、Iの存在を思い出した。しかし、あの仕事場を辞めて以来、やり取りは一切していない。下手すれば、私のことなんて忘れているかもしれないね。
 だけど、試してみる価値は十分にある。私は、スマホでLINEを起動し、夜の挨拶文を彼に送ってみた。すぐには返信が来ないだろうから、スマホでニュースサイトを見る。
『アメリカ・ロシア両国、ドイツに宣戦布告。人道上の問題解決のため。』
トップの見出しがそれだった……。とはいえ、不穏な世界情勢だったから、それほど驚きはしない。他のニュースは、陸上自衛隊が、知的障害者で構成された部隊を編成したとか、水素ステーションの数が百ヶ所に達したとかだ。

『何の用?』

 そこへLINEの通知が入る。Iからだ。意外と早く返信が来たので、私は拍子抜けする。こんなことなら、あの電車で聞いた話の続きを、もっと早く尋ねるべきだったね。
『いろいろ聞きたいことがあるんです。』
送信すると、すぐに既読がついた。
 それから五分後、画像が送信されてきた。
『言葉を画像にして送れ!』
そう書かれたメモ用紙の画像だ。スマホのカメラで撮影して送ってきたらしい。
 どうやら、セキュリティ対策のようだけど、意味あるのかな? めんどくさいけど、質問に答えてもらえなくなったら困るから、机の引き出しを開け、メモ用紙とかを用意する私。

『この前の話を詳しく教えてください』
私はそう切り出した。
『世界が大きく変わろうとしてるってことだよ』
大雑把な回答だね……。具体的に教えてほしいのに。
『どういう意味なのかを、わかりやすくお願いします』
『この世界はリセットされる。世界中が無政府状態というわけ』
とんでもないことが起きるようだね……。
 普通の人や以前の私なら、彼が嘘をついているとしか思えないだろう。だけど、今の私は本当だと信じられる。この1年半ぐらいの間に、惨劇を何度も見てきたからね……。
 文章を書く手が、自然と震えてしまう。書き間違えてしまい、メモ用紙を丸めて捨てた。……深呼吸、深呼吸。

作品名:正常な世界にて 作家名:やまさん