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正常な世界にて

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 とはいえ、このまま高山さんを避け続けてしまえば、絶交という状態になるのは間違いない。それは嫌だ。
 失敗続きの悲惨な高校生活を送るところだった私を、彼女は救いとってくれた。命の恩人とまでいかないけど、大切な友達だ。物騒な要素が彼女に含まれていたとしても、以前のような仲を保ちたい。彼女が悪い事するのを、危険を覚悟で止めてみてもいい。

 そこで私は、坂本君に少し我慢してもらう形で、高山さんに積極的に接してみることにした。坂本君と高山さんに対して、できるだけバランスよく接するというわけだ。そういえば、最初の頃はこんな感じの関係だったね。
 なぜか懐かしく感じてしまう私……。あの頃は、まだ穏やかな日常だった。だけど、グシャグシャと変貌する世界や、連発する尋常じゃない出来事のせいで、この頃は少しも穏やかな気分ではいられない……。
 せめて、私たち三人がいっしょのときだけでも、あの頃にいられたら……。うまくバランスを取れれば、うまくいくだろうね。

 ところが、これはとても難しいことだった……。第三者の見方によっては、余計悪化したように見えるかもしれない。
 坂本君と高山さんの趣向には、大きな違いがあるから、三人いっしょに談笑できる話題は少ない。それに私は、話上手ではない。だから、すぐに気まずい展開に陥ってしまうのだ。
 それでも私は努力を続けようとした。けど、ちっともうまくいかない。私の精神力は、日々削がれていく。それは家族に察知され、毎朝のように口喧嘩となってしまう。そのせいで、さらに精神的ダメージを負っていく私……。また吐くことになりそうだね。

「……森村さん。ボクに気を遣わなくていいよ?」
ある日の放課後の教室にて、坂本君が私に声をかけてくれた。高山さんはトイレだ。さすがの彼も、友達関係維持のために、私が努力していることに気づいてくれたらしい。
「でも、坂本君が寂しくなっちゃう……」
「大丈夫だって!」
そこへ、高山さんがトイレから戻ってきた。
「どうしたの? 何が大丈夫なの?」
聞こえてしまったようだ。坂本君の声は普段から大きめだからね。
「ボクは大丈夫だから、森村は高山と仲良く話していてくれってことだよ」
わざとかもしれないけど、その言い方はまずい。高山さんは、表情を瞬間冷却させる……。

作品名:正常な世界にて 作家名:やまさん