正常な世界にて
教室に戻った私と坂本君は、冷やかし顔の男子たちと怨めしげな女子たちに出迎えられることとなった……。先生まで、ニヤケ顔を向けてきた。あんなドラマみたいな一部始終が起きたのだから、こういう反応をされるのは仕方ないけどね……。高山さんもきっと、
「…………」
私たちを見る彼女の表情は、すっかり凍りついていた……。冷酷な激怒という氷で覆われているようだ。周囲のクラスメートには何も感じさせず、私たちだけにズキズキと感じさせる……。私はぞくりと恐怖し、坂本君に視線で助けを無意識に求めていた。このままじゃ、吐き気をぶり返しそうだ。
ところが坂本君も、高山さんのそれに気づき、恐怖していたところだった……。ぎこちない顔つきで、わずかに震えている彼。
そして、クラスメート全員および先生は、彼女が恐ろしげに激怒していることなんて知らずにいた。テレビを前にして、笑ったり泣いたり怒ったりする人々と同じ、同じなのだ……。
「あははっ」
「ヘヘヘッ」
私と坂本君は、気まずそうに笑ってみせる。これが、多数派の求める反応だと思ったからだ……。