正常な世界にて
……数秒後、私は坂本君に抱きつかれていた。座ったままの抱擁とはいえ、私の心は急沸騰してしまう。乙女心は、最高潮を軽々と越え、オーバーヒート状態に陥っていた。自分はピュアな人間だと勝手に思っていたけど、それは事実だったようだ……。
周囲にはクリスマスイブを楽しむカップルがたくさんいたので、恥ずかしさは湧いてこない。羞恥心が不要であるという事実が、乙女心を堂々と燃え上がらせるのだ。
「怖かったんだよ……。せっかく出会えた発達障害者の女の子に逃げられてしまうのが……」
やっぱりそうだったんだね。でも、私は平気だよ。私からしても、坂本君はせっかく出会えた存在だもの。
そして、私は抱きつき返した……。大丈夫。彼といっしょなら、この世界がどんなに変わったとしても、なんとかやっていけるはず。
そう思うことに決めた私。