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正常な世界にて

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【第6章】



「……暇だなぁ」
私の視線の先には、殺風景な天井がある。
 自分の部屋で、ベッドに寝転がっている私。冬休み近くの日曜日で、予定は何も無いのだ。パソコンやスマホでダラダラと時間を潰してもいいけど、親に怒られるし、目に悪い……。だから今は、ただ時間をやり過ごしているというわけだ。

 しばらくそうしていたとき、ふと頭に浮かんだことがある。しつこい油汚れのように、頭の中に残っている疑問だ。その解決のために、この暇な時間を使えばいいのだ。
 ……その疑問とは、あの封筒の送り先についてだ。何度も封筒を見ているため、送り先の住所はもう覚えてしまっている。さっそく、枕元のスマホを手に取り、住所検索をする。

 その住所の場所はすぐにわかった。ある駅から少し離れた住宅街にある一軒家に、目的地を示すピンが刺さっている。この程度の距離なら、自宅から片道一時間ぐらいだ。
 ここでストリートビューを使えば、現場の写真をすぐに見られるけど、見ないでおく。せっかくの暇つぶしなのに、スマホで見るなんてつまらないからね。
 さて、善は急げだ。支度がさっさと済ませると、私は家を出る。……だけど、財布を忘れていることに気づき、取りに戻る羽目になった。少しでも急ぎ足だと、こういう具合に何か忘れ物をしてしまうのだ。財布を忘れるなんて、百回はやってることだろうね……。



「どういうことなの!?」
目的地の最寄り駅から出たところで、そんな大声が聞こえてきた。同い年ぐらいの女の子の声で、駅前のバスターミナルのほうからだ。
「い、いっしょに遊べば楽しいかなと思ってさ!」
もちろんすぐわかったけど、その男の子の声は坂本君だった……。今の彼の声は、狼狽え気味だ。
「はぁ!? デートのはずじゃん! 男女比が違うデートなんて、普通ありえないっしょ!?」
これは別の女の子の声だ。どうやら、痴話喧嘩になってるらしい。興味本位により、私の足は自然とその現場へと進む。女たらしの坂本君が無様に狼狽える姿なんて、めったに見られるものじゃない。この場に高山さんがいないのが残念だ。


 予想通り、この痴話喧嘩の主人公は坂本君だった……。彼と女の子二人は、バスターミナルのところで、激しい舌戦を繰り広げている。周囲にいた人たちは、関わりたくないという様子を出しつつ、野次馬になっていた。まあ私も野次馬の一人なんだけどね。
 坂本君に見つからないよう、私は人影にそっと隠れる形で、彼らの痴話喧嘩を見守ることにした。

作品名:正常な世界にて 作家名:やまさん