正常な世界にて
“パンツを売りなよ”
さっそく坂本君が、下ネタを勢いよく飛ばしてきたけど、既読無視で構わない……。
“バイトしてみたらどう? 裏方のやつなら、先生や親にバレないよ”
模範解答が返ってきた。とはいえ、自分でもバイトは考えていた。
自立支援医療制度で一割負担とはいえ、クリニックや薬にかかる費用は、私の貧弱な財政事情には重荷だ。そのため、バイト代で起死回生を図りたい。
……だけど、学校生活でも苦労しているのに、さらにバイトをするなんてことは自殺行為に思える。高校生とはいえ、このご時世だ。長時間労働でこき使われたあげく、クビになる展開は目に見えている。すぐクビに展開もね。
もちろん、あと何年かすれば、社会人として働かなくちゃいけない点はわかっている。けれど最近は、それに自信を持てずにいた……。
“私がやっているバイトを紹介してあげようか? きつくない仕事なんだけど”
高山さんがそう言ってくれた。彼女がバイトをしているとは初耳だ。いったい、どんな仕事なんだろう?
“高山、一回いくらでウリやってるの?”
“あるNPOで働く簡単な仕事だよ。力仕事じゃないから、それほど疲れないし”
求人広告には「簡単なお仕事」という文句が踊っているものだけど、彼女の紹介なら信用できそうだ。なお、坂本君の言葉は、既読無視で構わない。
私は、前向きな回答を返した。せっかくだから、彼女に甘えることにした。といっても、甘えるのは今回が初めてじゃない。
“わかったよ! じゃあ、詳しいことは、明日学校でね!”
“高山さん。ボクもそのバイトを紹介してください。(マジ)”
坂本君も、彼女に紹介してもらうことになった。たぶん、女遊びで金欠なんだろうね……。
でも、男である坂本君にも紹介できる仕事だから、エッチな仕事じゃない点はわかる。学校で明日判明するとはいえ、どんな仕事なのか、気になる私。今夜はすんなり眠れるかな。