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正常な世界にて

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「……岐阜で殺人か」
ボソッと呟く私。
 今池駅のホームにある電光掲示板に、そんなニュースがテロップで流れていく。岐阜県内のアパートで、隣人を殺す事件が発生したようだ。犯人は現場で緊急逮捕されたものの、意味不明なことを話すばかりだそう。
「こういう事件増えたね」
私はそう言い、そばにいる高山さんや坂本君を見る。
「冬がくるし刑務所目当てじゃない?」
「そんなところよ」
坂本君と高山さんはそう返事した。
 私たちは電車を待つ。この駅から途中までは一緒だ。
「意味不明なことを話してるってことは、頭がおかしい人ということかな?」
私はさらにそう言った。
「さあね。もしかしたら、聞き手が無能なのかもよ」
「それありえるね! ついこのあいだデートした女がそんな感じで、意味不明ですという態度でボクの話を聞いてたっけ」
女たらしな彼とホイホイ遊ぶような女ならあり得る話だ……。

 私たちはそれぞれの家路につく。坂本君のことだから、帰りがけでもナンパするのかな? 逆に高山さんはよくナンパされてるそうだ。あいにく私は、ナンパしたこともされたことも無い。
 ここでふと考える。悲しくなるから普段考えないようにしている事だ。もし誰かと付き合うことになった場合、自分が発達障害者である事実を、相手にカミングアウトすべきだろうか。付き合うだけならまだしも、結婚することになった場合を考えると……。
 もし相手が良き理解者だったとしても、両親や祖父母の世代は、古い考えの持ち主が多い。きっと猛反対されるはず。
 けれど、いつまでも黙っておくのは無理がある。
 相手をより取り見取りできる外見の高山さんや坂本君なら、なんとかなるかもしれない。しかし、自称平均面の私はいったいどうすれば?

作品名:正常な世界にて 作家名:やまさん