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正常な世界にて

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 嬉しいことに、日曜日は朝から快晴だった。典型的な梅雨の晴れ間だ。暑さはさておき、行楽日和だ。クラスメートが死んだばかりで不謹慎かもだけど、今日一日楽しもう!
「おっと、財布を忘れるところだった」
自室を出た直後、忘れ物に気づく私。薬のおかげか、忘れ物をしても気づきやすくなった。医者に診てもらうまで、駅に着いてから気づくというパターンが多かったのだ。
 ただそれでも、家を出た時刻はギリギリとなってしまう。いつも通り、遅刻寸前の流れを辿るだろう。薬の量が増えれば、これもマシになるのかな?


 ――待ち合わせの東山公園駅の東側改札所に、高山さんが立っている。腕時計を見ると、やはりギリギリセーフだ。間に合ったとはえ、遅刻寸前には違いない。
「待たせてごめん!」
「いいよいいよ。……坂本君は遅刻らしいね」
坂本君はまだ来ていないらしい。彼もADHDだけど、私よりも重症なのかも。
「坂本君のツイッターから、もう家を出ているのはわかったけど、スマホにつながらないんだよね」
暇潰しおよび話のネタ集めに、彼の呟きを読んでみたくなった。リア充臭でプンプンな内容だろうな。
「混んでいるから、私たちに気づかず通り過ぎちゃったのかも」
私はそう言った。今日は行楽日和なので、東山動植物園へ向かう人々で駅はかなり混雑していた。坂本君が私たちに気づかず通過してしまった可能性はありえる。
「三十分ぐらい前からここにいるけど、それは無いと思うよ。でも、もしかしたらということがあるし、先に行っちゃおうか。入口が混むとウザいし」
行列に並ぶのは大嫌いだし、障害者手帳を使うところを周りに見られたくないため、そのほうが有難い。
「ちょっと待って〜!!」
私と高山さんが、そこを後にしかけたとき、坂本君がようやく来た。スマホを握る右手を激しく振っている。
「ゴメンゴメン! 乗り過ごしちゃってさ!」
きっとスマホに夢中で気づかなかったんだろう。私もよくするミスだから、彼を責められはしない。
「遅れてきたのだから、アイス奢ってよ?」
抜け目の無い高山さんだ。節約のためにも、遅刻しないよう気をつけなくちゃ……。

作品名:正常な世界にて 作家名:やまさん