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正常な世界にて

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 坂本君と変わらない醜態を晒すかと思いきや、高山はしなかった。いや、したくなかったに違いない。
 プライドから彼女は反撃に移った。近づく彼女の顔には、相打ち覚悟がハッキリとあらわれている。ベンチで死にかけてた際の表情に、開き直りが加えられた感じ。
「もっと痛くなるだけだよ?」
私は彼女に言った。後ずさる気はないけど、彼女を近づけたくもない。
 私ができるのは、彼女を確実に殺すこと。比喩じゃなく、ホントに殺すのだ。そう、殺さなくちゃいけない。
 ピストルのグリップに、最大限の握力をかける私。弾切れでも使い道はあるんだ。「バカとハサミは使いよう」ということわざを、あえて挙げよう。
「ワタシを、ワタシをもし殺せても、命令は消えない、消えないんだから……」
殺気を受け取った彼女が言う。教科書通りの脅し文句だけど、口元に笑みが見えた。……見てしまったのだ。

 私は周りを見回し、彼女の仲間がいないか確かめる。両腕を大きく広げ、反時計に一回転してね。敵はいなかったものの、今のは場違いで派手な動きに見えたはず。坂本君に余裕があれば、小言を飛ばすような。
「……なにそれ、サウンドオブ、サウンドオブミュージック?」
代わりに小言を飛ばしたのは高山。口元に笑みはもうない。

 気分転換したい気持ちもあり、つい派手に一回転しちゃった私。 正直、死にかけた彼女じゃなく、その仲間が怖い……。本名も性格も知らない存在が、この世のどこかで生き、私たちを殺すかもしれないんだ。
 仲間はわかりやすい姿かもしれないし、わかりにくい姿かもしれない。理解できない言葉を口走ったり、おかしな行動を取ったりで、恐怖感を与えてくることも考えられる。報復の前にあえてね。
 しかし、高山をここで見逃したところで、恐怖の日々からオサラバできるわけじゃない。彼女は退場などせず、自分自身の力で報復してくる。
 円満な解決は絶対できない。間違いなく、自力ではできないことだ。
 私ができるのは、彼女を確実に殺すこと。何かに対する脅しでもない。
「そのときは消すだけ。お仲間が現れても殺すだけだよ」
高山にそう言う私。自分に鳥肌が立つほど、強気に言ってやった。

作品名:正常な世界にて 作家名:やまさん