正常な世界にて
「……避難所を救おうとしたり、若水さんを殺した男に仕返しした件は、すごいし偉いと思う」
声のトーンを落とし、話を逸らす私。彼女の熱弁は時間稼ぎになるけど、明らかに引っかかるんだ。今日のような厄日は特に。
「当然の行動だよ! 新しい日本や世界を構築するために、必要な人間は生かし、不要な人間は殺しただけ!」
高山さんはそう言った。トーンを沸騰させ、自信満々の口調で声高に。私の全身に鳥肌が一気に立ち、一瞬めまいも。
彼女は声だけじゃなく、表情までバカみたいに興奮させている……。かつての高山さんは、絶対もうそこにいない。
ああもう、ようやくまた理解できた。私が今できるのは、彼女にツラく当たること……。