正常な世界にて
「ああそれも、その辺りも、まず大丈夫だよ。ここもだけど、電気はちゃんと届いてるし、原発がそう、動いてるから大丈夫大丈夫!」
伊藤は言い切ると、痛み止めを求め、救急箱へ手を伸ばす。私が代わりに、箱からロキソニンを見つけ、それを彼に渡した。そのまま飲むのは危ないので、流し台の水も後から渡す。
「ありがとね」
彼はそう言うと、深呼吸を穏やかに繰り返す。この様子なら、私たちが役目を終え戻るまでは大丈夫そう。
「ほらほら、追いかけなきゃ」
精一杯の苦笑いを浮かべ、彼は促してきた。
そう、彼は待ちきれずに行ってしまったのだ……。幸い、駅事務室から飛び出してすぐに、彼を見つけられたけど、冷や冷やな気持ちだった。
どうやら、坂本君の行動に慣れっこと誇れるのは、まだ少し先だね。