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正常な世界にて

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「分が悪いと思わない? 絶対何か仕掛けられてる!」
「うん、それは十分あり得るね」
伊藤がフォローしてくれた。しかし、引き留めるつもりはないらしい。
「心配し過ぎだよ。せいぜい、上からボウリング玉が落ちてくるとかだよ。間違いなく高山は油断してるしさ」
いや、油断しているのは坂本君だ……。ついていくにも行かせるわけにもいかない。
「けど、たくさんいたらどうするの? 私たち二人だけじゃ、相手にならないよ? その……いくら坂本君が銃を……上手く撃てても」
腕前もそうだし、予備の弾にも不安がある。ついさっきも雨あられと撃ちまくったじゃない……。
「大丈夫だって! さっきの場所みたいに、高山の手下なんてガキか女しか残ってないに決まってるよ!」
彼が強弁する。とってもうるさそうに。
 ありえる話だけど、それは私たち二人も同じこと。私なんて、それら両方を満たしている。
「いくら女子供が相手でも、油断しちゃ駄目だよ?」
再び入る、伊藤のフォロー。しかし、口調に真剣さはこもっておらず、軽口レベルの些細な忠告に過ぎないとわかる。半笑いまで浮かべ、伊藤も油断する始末……。
 ああ、もう限界。
「いい加減にして! なんでそんな軽く考えるの!」
私は叫んだ。感情に動かされ、自分自身も驚く声量および早口で。

「…………」
「……えっ?」
即座に立ち止まり振り返って、凍りついた表情を見せる坂本君と伊藤。一瞬振り返ると、ゲート係の男もそんな顔を浮かべて、私を見下ろすばかりだった。
「えっと、ごめん……。少し調子乗ってた」
「うん、私も同じだ。ごめんね」
前方の二人はそれだけ言うと、階段を再びおりていく。とりあえず謝罪を受け入れ、私も後に続いた。坂本君が素直に謝ったのは、伊藤の手前だからかもしれないが、悪い気はしない。
 私たちにワンテンポ遅れる形で、ゲート係の男もおり始める。彼はたぶん、坂本君よりも驚いたんだと思う。「坂本君の付き添い」程度の存在と捉えてたのかもしれない。
 ……いやそれは、私の邪推かマイナス思考かな?

作品名:正常な世界にて 作家名:やまさん