小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

正常な世界にて

INDEX|299ページ/381ページ|

次のページ前のページ
 


「できる事をやる。うん、そういうこと!」
家のドアを閉めた直後に、坂本ママはそう言った。どうやら、私の理解は正しかったらしい。
「残念ながら男女平等は、同じ明るさだけを背負わされるわけじゃないからね。男と同じように、暗さも背負わなくちゃいけない。……この子をここまで運んだ分は、明日返させるわね?」
彼女はそう言うと、そっとウィンクを飛ばしてくれた。ついさっきは、酷く疲れているのに修羅場突入かと焦ったけど、うまく対応できてよかった……。
 明日からもこの調子で対応していけば、本当に姑付き夫婦生活が始まっても、なんとかやっていけそうな気がする。


 坂本君は、私と坂本ママにより、自室のベッドで寝かされた。すっかり酔い潰れて呑気な彼は、小さなイビキまでかき、完全に眠り込んでいる。とても何時間前に、自動小銃を撃ちまくり、銃弾の中を駆けた高校生には思えない……。銃を撃ちまくった事に関しては、私も同じだけど。
 まあ、オンとオフの切り替えを上手くできていると思えば、それも彼の長所だと言えるね。彼にその自覚自体があるとは、正直思えないが。
「鳴海の隣りでも寝られる?」
「あっ、大丈夫です!」
堂々と言った私。そういえば、この家の中では、坂本君を下の名前である鳴海と呼んだほうが良さそうだ。恥ずかしくて言いづらいけど、私は彼の婚約者だからね。
「そう。じゃあ、おやすみ」
「おやすみなさい」
婚約相手の母親である彼女に、私はそう返す。できるだけ自然な口調を意識すればいいはずだ。
 私は坂本君の隣りに寝転がると、そのまま両目を閉じる。夢の世界で思わず驚くぐらい、それからすぐに眠れた。



 ――翌朝、目を覚ます私。目に飛び込む天井は、もちろん本来の自室のそれじゃない。とはいえ、昨日よりは違和感が弱い。
 幼い子供だと、引っ越したばかりの新しい家になかなか慣れない場合が多いと聞く。だけど、私はもう幼くはない。少なくとも、自分自身ではそう思ってる。そう思いたいものなんだ。

 自問自答の時間を一旦終えた私は、ベッドから離れ、リビングのほうへ向かう。既にベッドに坂本君の姿は無く、昨日と同じく、彼はそこにいるはずだ。そして、軽い朝食を済ませた後、これまた昨日と同じく、調達に出かけるという流れだろう。

作品名:正常な世界にて 作家名:やまさん