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正常な世界にて

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 どうやら、ゲートに誰かがやって来たようだ。ふと腕時計を見ると、今は夜11時過ぎだった。宴会による騒音被害が出ていてもおかしくないし、酷く目立つはず。近所の人か、受け入れを求める人だろう。私も含めた全員が、その二択を頭に浮かべているに違いない。
 しかし、ゲートからコミュニティ内のここまで声が聞こえてくるということは、それこそ騒音レベルな大声だったというわけだ……。野太い女性の声だった。

 その来訪者が現れたのは、私たちが銃撃戦を繰り広げた側のゲートじゃなくて、その反対側だった。今朝出かけるときに通ったほうだ。そのゲートにも係を二人配置していたそうだけど、今は誰も立っていないらしい。なにしろ、この時間帯のゲート係二人が、宴会で酔い潰れている有り様だからだ……。危機感を失っているのか、元々平和ボケなのか?

「ワシが行こう」
このコミュニティの長を一応任されているお爺さんが、来訪者に対応すると言ってくれた。ゲートで一悶着起こして死んだジジイとは大違いだね。
 とはいえ、お爺さん一人だけでゲートに行かせるのは危ないため、本来のゲート係二人も一緒に行かせることになった。だけど、みんなに叩き起こされ、ゲートへ向かう彼らの歩調は、酔っ払いそのものだ。しかも、二人とも自動小銃を構えている……。
 ここで私が不安がるのは、正常な反応だよね? まあ、この選択自体が、宴会で酔っ払った末に下されたものかもしれない。

 不安だけど、今はあの3人組に任せることにして、私は再びノートに目を向ける。
 そのページには、半月前に開かれた会議のメモが書き込まれていた。愛知県警本部で開かれた会議の概略で、収容所からの脱走者をどう追跡するかについて、いろいろと話し合っていたみたいだね。四苦八苦する会議の様子が、なんとなく想像できた。

 ところがその時、銃声が鳴り響き始める。突然夜闇を貫いてきた銃声に、私は驚くしかなかった。昨日と今日だけで、銃声は100を優に超えるぐらい耳にしたけど、いきなりの銃声には慣れそうにないね……。
 銃声で読書を強制中断させられたわけだけど、今はそれに文句言える状況じゃない。酔っ払いのゲート係が、自動小銃を暴発させた可能性が一番高いけどね。
「穏やかに過ごせる日々はいつ来るんだろ……」
愚痴を呟きながら、ポケットにノートを突っ込んだ私。

作品名:正常な世界にて 作家名:やまさん