正常な世界にて
ところが、そこで珍事が起きる。力任せに勢いよく閉めたせいで、ドアが枠からガチャンと外れてしまったのだ……。まるでコメディ映画のワンシーンのようだった。思わず笑ったけど、耳元に妙な音が届いた途端、パッと真顔に戻ってみせた私。
シューシューという空気が漏れるような音が、近くから聞こえてくる。危険性は無さそうだけど、念のためライフルをしっかり構え、音の出所を探す。タイヤの空気は既に抜けているし、どこからだろ?
その出所はすぐに判明した。すぐ近くで倒れている兵士の首か口からだ……。
その兵士は、例のナイフ持ちの兵士だった。今は酷い見た目を晒しながら、死を目前に控えている。ナイフを握っていた右腕は、肘辺りで千切れて転がってるし、首から胸にかけてなど、濡れ濡れの赤い雑巾のようだ……。
死にかけの兵士は、口をパクパク開け、私に何かを伝えようとしてくる。だけど、口から出てきているのは、言葉じゃなくて鮮血だ……。
もはや親切なレベルで、この兵士の死を把握できた。私ができる行動は、今度も人助けだ。保護とまでは言えないけど。
ライフルをリロードする。私はゆっくりやることなんて忘れ、素早くこなした。そして、すぐに狙いをつける。この距離なら外しようがない。
ライフルの引き金を引いてみる。……うん、見事命中だ。