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正常な世界にて

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 車の前方に、センターガーデンのゲートが見えてきた。出発した時とは反対方向だけど、こっち側も最低限の守りは確保できているみたいだね。……とはいえ今は、ちょっとした問題が起きているようだ。
「ああ、邪魔だな」
「ちゃんと止まってよ?」
逃げてきた避難者と思われる、10人ぐらいの人々が、ゲートの前に集まっている。ゲート担当の若い男性二人組が、避難者たちと言い合っていた。不穏な雰囲気だ。
 安全な場所だと察した人々が、中に入れろと叫んでいることぐらいは、簡単に把握できた。私自身が保護してもらえた身なので、彼らも保護されてほしいところだ。とはいえ、実際の問題としては、何人も保護するのは難しいんだろうね……。

 坂本君は、集まる人々の手前で車を停車させてくれた。私が声かけしなかったら、人々がブレーキ役になったかもしれない。そんな気がしたのだ……・。
 車の接近には気づいたはずだけど、人々はゲートでの押し問答で忙しいみたいだ。私たちは車から降りて、ゲートに近づく。
「早く中に入れて!!」
「お前らだけズルいぞ!!」
人々は口々に叫んでいた。どれも大声だけど、リセットによる大混乱に苦しんだ焦燥感が、そこに浮かび上がっている。私自身もたいがいだけど、多大な苦労をこの二日間で経験したんだろうね……。
「どいてくれよ!!」
坂本君が人々に呼びかけたものの、どいてはくれない。耳に届いていないのか、無視しているのか……。
 私たちは幸運なことに、そこの住民なんだ。ゲートをくぐり抜け、比較的安全に暮らせるわけだ。あの兵士たちを見かけたらきっと、報いを受けさせてあげるから……。

 突然、2発分の銃声が私のすぐ横で鳴った。しびれを切らした坂本君が発砲したことは把握できたけど、あまりにも突然の発砲で、私の耳や脳が震えるようだ……。
「今すぐどけ!! どけ!!」
彼が再び威嚇発砲しようとしたので、手を伸ばして止める。耳鳴りが酷いし、ここでの銃声は、あの兵士たちの関心を引いてしまう……。
 嬉しいことに、彼は制止した意味を理解できたらしい。もう手遅れかもしれないけど、人々をこれ以上怖がらせたくない気持ちもあった。
 威嚇発砲により、集まっていた人々は道をサッと開けてくれた。当たり前だけど、やっぱり怖がらせてしまっている。ついさっき、あの公園で兵士たちによる乱射を経験したばかりだしね……。

作品名:正常な世界にて 作家名:やまさん