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正常な世界にて

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 私は、スコープから一旦目を放し、ライフルをいつでも撃てるように整える。ボルトをカチャリと引き、最初の弾をセットした。これで引き金を引けば、鉛筆の芯みたいに尖った銃弾が、銃口から飛び出していくわけだ。どんな構え方、方向、気持ちであろうと、弾丸は素知らぬスタンスを貫く。
 ……スコープを再び覗いてみると、つい10秒ほど前よりも、状況はさらに悪化していた。外人たちの赤く燃え上がった顔が、スコープ上で映えているほどだ。ほぼ間違いなく、坂本君が彼らに、余計なことを口走りまくったんだろうね……。
 彼が悪いのかは脇に置き、どこを撃つべきか? スコープ上に浮かぶ照準通りに、銃弾を真っ直ぐ飛ばせるはずが無いことはわかってる。撃った瞬間の反動を考えて、ほんの少しだけ下に合わせよう。
 私は、一番強そうで日本人好みじゃない外人の足元に、照準の先を合わせた。これなら撃っても、威嚇射撃か足のケガで済むはずだ。
「口喧嘩だけで終わってほしいな」
とはいえ、1発も撃ちたくないのが本音だ。このまま口喧嘩で終わり、必要な物資を分けてもらえるなら、ひとまずは解決だからね。別に、あのコンビニのオーナーに借りがあるわけじゃない。これ以上、恨みは買わなくていいのだ

 ところが、坂本君はとうとう、面と向かって話していたリーダー格の外人に、右肩をドンと押されてしまう。転ぶほどじゃないけど、彼は一歩後ろへのけぞる。
「危ない!」
思わず声を出して焦った私は、強そうな外人の足元じゃなくて、その外人のそれに、照準の先を急いで合わせる。

 ドォォン!!

 その瞬間、耳に銃声が貫く……。照準を移した際、引き金に指が引っかかってしまったらしい。これはヤバいレベルのうっかりミスだ。
 しかし、放たれた銃弾は戻ってこない。高速で飛んでいったそれは、一面ガラスに貫通し、あの強そうな外人の頭に命中した……。外人は、こめかみにできたばかりの穴を確認する暇もなく、向こう側へバタンと倒れ込む。こめかみの穴から、鮮血が噴きあがり、ヒビ割れた窓ガラスにも飛び散った。
 外人たちは、倒れた外人を介抱するが、すぐに顔を青ざめさせた。燃えるような赤色から、恐怖心を現す青色へだ……。
「オーーー!」
万国共通の叫び声を上げつつ、バックヤードの中へ逃げていく外人たち。それから数秒後には、通用口から一目散に逃げていく。皆、短距離走選手みたいな、逃げ足の速さだった。

作品名:正常な世界にて 作家名:やまさん