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正常な世界にて

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 物資調達のついでに、坂本君は銃をさらに入手するつもりだった。日本は銃規制が厳しい国だったから、アメリカみたいに銃や弾薬を取り扱う店があっちこっちにあるわけじゃない。それに合法的にも違法的にも、銃を簡単には入手できなかった。
 坂本君が小池刑事から銃を入手できたことは奇跡だし、伊藤が重機関銃を作ったことも奇跡だ。その2丁の銃があるだけで、私たちは十分に恵まれている。これ以上の武装が必要なのかな? それにどうやって入手するの?
 次々に浮かぶ疑問を胸に抱きつつ、車のほうへ一緒に歩き続けた。


 物資調達に使う車は、白い軽トラックだった。駐車場の一角に停められていたそれは、マンションに仕事で来ていた造園業者の車だった。荷台部分には、業者名が書かれている。伊藤の話だと、持ち主の造園業者は、庭仕事を放棄して行方不明らしい。
 草木の手入れが中途半端な状態なのは不運だけど、車のキーが差しっ放しなのは幸運とのことだ。ここはありがたく、有効活用させてもらおう。このデカいリュックサックを背負って歩き回るのは、かなりキツそうだからね……。
「ボクが運転するね?」
「うん」
私も坂本君もまだ17歳だ。自動車免許なんて持ってないし、自動車学校の申し込みすらしていない。無免許運転だけど、今は無政府状態だからね……。免許証がゴールドか否かも無関係だ。

 坂本君が運転する車に乗るのは、もちろん今回が始めてだった。だけど、坂本君の運転技術が上手いレベルじゃないことぐらいは、用意に察することができる……。助手席の私が、しっかりガイドしないといけないね。発車直後に、電柱か何かに正面衝突してしまう事態は避けたい。


 そして、軽トラックは、坂本君が急アクセルを踏む形で勢いよく走り出した。これは想定内だけど、シートに背中を押し付けた瞬間、キツイ徒歩のほうが安全でマシじゃないかと感じた……。まあ、駐車場から無事故で出られたから、彼にハンドルを任せることにする。いざという時は、エアバックの活躍に期待しよう……。
 坂本君運転の車は、センターガーデンの通りを疾走していき、伊藤たちが急ごしらえで設けたゲートを通過する。門番の男性たちが、呆れと驚愕が入り混じった表情で、私たちの車を見送ってくれた。彼らはきっと、この車が廃車になると予想してるに違いない……。

作品名:正常な世界にて 作家名:やまさん