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正常な世界にて

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 自動車にも使われる水素燃料か。銃の後部に水素タンクが接続されているのが見える。もしかすると、トヨタのミライで使われているタンクを流用しているのかもしれない。
 そういえば、昨日の地下鉄で、水素を使う車イスがあった。流れ弾でタンクからそれが漏れた結果、電車内で爆発が起きた出来事は、記憶に新しい。これは大丈夫なのかな? できることなら、坂本君を危険な目に遭わせたくない……。


「あんな銃まで揃ってるから、ここはだいぶ安全だよ」
坂本君が言った。彼と私は、リュックサックを背負っている。どちらも自分が、普段の外出で使っていた物だ。これから車で外出して、仕事をこなしてくるのだ。それは、このセンターガーデンを「集落」として維持するために必要な事らしい。また、集落の一員としての義務であるそうだ。労働は義務というわけだけど、別に悪い気まではしない。それに暇だしね。

 その任された仕事とは、彼の予想通り、外出して物資を調達してくることだった。とはいえ、私や坂本君は、一応まだ高校生の身だ。調達する物資は、安全なセンターガーデンの周辺で見つけられるような品々だ。品名が書かれたメモを一読して、私は正直ほっとした。コンビニを数軒回るだけで、確保できる種類や量に過ぎなかったからね。
「その、すごく強そうな銃だったね。戦争をやるみたいなさ」
銃規制や戦争に厳しい日本で育ったからだと思うけど、人殺しの道具である銃に対して、抵抗感は捨てられなかった。
 確かに、坂本君がピストルを扱ってくれたおかげで、昨夜は窮地を抜け出せた。だけど、銃で窮地に陥ったこともある。金山駅近くで受けた狙撃がそうだ。あの時は、障害者手帳を使う奇策で切り抜けられたけど、今度も成功する可能性は低い。逆に、もっと危険な状況に陥る可能性のほうが高そうだ……。
「戦争? 大袈裟だよ! 正当防衛のためさ!」
笑い飛ばし、正当化する坂本君。しかし、彼は悪くない。昨夜の出来事を考えれば、銃で武装することが当然の権利だと思ってもおかしくない。正直、私自身も本音として、薄々そう思い始めてる……。

 だけど、私と坂本君がこれから行なおうとしていくことは、正当防衛の領域からはみ出していると思われても、またおかしくない行為だった。誰かを傷つけるわけじゃないけど、抵抗感がある。
「ねえ、坂本君? 今ある分だけじゃダメなの?」
「ダメダメ! 伊藤のマシンガンと、ボクのピストルだけじゃ、十分に守り切れないって! あくまで正当防衛の道具として、銃を貰うだけだよ!」
強く反論する彼。強気な口調から、彼が説得に折れそうにないと察した。彼は時々頑固になる。

作品名:正常な世界にて 作家名:やまさん