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正常な世界にて

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「おはよう! 昨夜の爆発で叩き起こされなかった?」
マンションの出入口付近で、伊藤さんが挨拶してきた。目が充血しているところを見ると、徹夜で何か作業していたようだね。しかし、まだ寝起き気分の私よりも元気な感じだ。
「ボクも森村も起こされちゃいましたよ。……もしかして、伊藤さん関係の爆発でしたか?」
「いやいや、違う違う。どうやら、池下駅の近くで大きな爆発が起きたらしい。火はもう消えているみたいだけど、外出で油断しちゃダメだよ? 簡単に作れちゃう肥料爆弾が使われてるみたいだからさ」
「ええっ? 肥料爆弾? まさか、伊藤さんが売った物じゃないですよね?」
「違う違う! 私が作ったのは、警察がすべて回収したはずだよ。……警察から盗まれた物じゃないとは言い切れないけどさ」
肥料爆弾? 農作業で使う肥料を使った爆弾? この伊藤さんは何者なのかはよく知らないけど、そんな爆弾を作れちゃうぐらいだから、世間的に善良な一般人じゃないということかな?
「伊藤さんは悪い人じゃないよ。バリバリの理系でアスペルガー持ちだったせいか、悪意なく、肥料爆弾とかを作っちゃってさ。杓子定規な警察に逮捕されちゃったことがあるんだよ」
私が訝し気な表情を浮かべていることに気づいたのらしく、坂本君が解説してくれた。
「弁解することは何も無いよ。警察にも言ったけど、ちゃんと理解してくれなくてさ……。今ならもう問題ないけどね」
伊藤が言った。この話は事実らしく、彼が少し怖くなると同時に、頼もしさも少しだけ感じた。
「新しく作り直した物を、さっそく使っているんですね?」
「うん、そうそう。自信作さ!」
自信満々の伊藤。
 リセット以前の社会なら「犯罪者」扱いだけど、今の社会なら「有能な人物」扱いだね。まったく同じ意味じゃないけど、チャップリンの『一人殺せば人殺しで、たくさん殺せば英雄だ』という名言を連想した……。
「肥料爆弾のほうは設置済みだから見せられないけど、あっちも自信作だよ?」
自信満々に、通りのほうを指さす伊藤。

 このセンターガーデンの中央部を貫く道路上に、重機関銃のような物が設置されていた。反動を抑えるためか、アスファルトに小さな穴が開けられ、そこに銃の三脚が突き刺さっている。
「水素で動く重機関銃さ! 水素のアグレッシブな力のおかげで、ものすごい勢いで撃ちまくれるよ! 坂本、もしものときは使ってくれよ?」
「ええ、もちろんですよ! 派手な武器は嫌いじゃないので」
笑顔で了承する坂本。伊藤も笑顔を見せる。

作品名:正常な世界にて 作家名:やまさん