小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

正常な世界にて

INDEX|23ページ/381ページ|

次のページ前のページ
 


「付き合ってる子いるじゃん!?」
「えっ、ちょ、違う違う!」
女子が振り絞った言葉に、坂本君はそう返すしかない。赤ら顔と青ざめた顔が向かい合うやり取りを、無責任に傍観する私。
 これが修羅場……。テレビドラマで使い古された光景にも関わらず、周囲から視線を向けられている。
「あらごめんなさい。付き合っているわけじゃないんだね?」
高山さんが女子に問いかけた。
「ええ、そうです! 相席を頼まれただけですから!」
強く正直に答えた女子。彼女は迷惑そうな表情で、坂本君を睨んでいる。手の平返しで、今は女の敵扱いの坂本君。
「オイオイ冷たいな。ボクと付き合いたそうにしてたじゃないか?」
坂本君がそんなことを口走った……。女性をバカにする失言だ。混乱が解けず、置かれた状況を理解できていないとしても、少々マズい。
「最低!」
さらなる恥をかかされた女子は憤怒し、オレンジジュースの紙コップを、坂本君の顔面へ降りかける。彼の上半身をグショグショに濡らすオレンジジュース。暖色に染まっていく、元は白かったスクールシャツ。
「うわっ!」
冷たさに悲鳴をあげる坂本君。氷まで服の内側に入り、彼の手首には鳥肌が立った。
 拍子に彼はイスから転げ落ちる。イケメン高校生らしからぬ、マヌケで情けない姿だ……。
 私と高山さんはとうとう笑い出してしまい、今度は周囲が戸惑う展開に。


「まったくさあ! なんでジャマしてくれたのかな!?」
店から少し離れた公園で、坂本君が私たちに文句を言った。「怒りに満ちた笑顔」という絶妙な表情だけど、殴りかかってくる気配はない。
 彼は手洗い場に立ち、水洗いしたシャツを絞る。上半身は肌着一枚だけなので直視しづらい。
「ムードある雰囲気まで運べたのにさ!」
女たらしの彼は、先ほどの失敗を嘆きたてる。
「それより話しておきたいことがあるんだけど、いい?」
「……なに?」
高山さんの切り出しに、坂本君は手を休める。ただ、彼女に壁ドンされた件がトラウマなのか、警戒心は露わだ。
「つい昨日わかったところだけど、森村さんもADHDだよ」
何の断りもためらいも無く、彼女は私の事実を教えてしまった……。

作品名:正常な世界にて 作家名:やまさん