正常な世界にて
「お前たち、ここの住人か!?」
これは神様の返事なんかじゃなかった。会ったことは無いけど、神様はこんな言葉遣いはしないはずだ。
開けたままの玄関ドアの前に、見かけない中年夫婦が突っ立っていた。今はそっとしておいてほしいのに……。
「ボクは違いますよ? ……入ってくんな!」
坂本君が叫んだ……。慣れない動作ながらも、彼はピストルを素早く構える。悲しさで一杯な私だけど、そんな急展開にアドレナリンが自然に沸いてきた。私もとっさに身構える。
その夫婦は、勝手に玄関へ上がりこんできていた……。助けを呼ぶ仕草や呼びかけをした覚えは無い。
なにしろ、坂本君が叫んだ原因は、その行動だけじゃないからだ。それは私にもすぐ理解できた。
彼らの姿は、こんな落ちこんだ状況に置かれた私たちへ、警戒心をフルに抱かせてくれた……。