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正常な世界にて

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 ……斧男は死んでいた。呼吸も心臓も止まっているのを確認したから、まず間違いない。体はすでに冷たくなり始めていた。私たちが薬を集めている間に死亡したんだろう。
 斧男が死んだ理由は、鎮静剤の過剰摂取に違いない……。容量を調べておくべきだった。鎮静剤を打ったり飲ませたのは坂本君だけど、私も死に加担したのと同じだ……。

「これで完全に静かになったわけだな……。だけど、こんな世界だと、このほうが幸せなのかもしれない」
坂本君が言った。自分に言い聞かせるような口調だ。
 彼同様に、私の中にも罪悪感が湧き出ている。よく考えれば、この斧男も、高山さんの組織による犠牲者だ。彼が起こした殺人事件の原因もそうだった。そして、それには私や坂本君も、少なからず関わっている……。

『触法患者の無力化を確認しました。このエリアの閉鎖を解除します。良い一日を』
アナウンスが流れる。これがもっと早く流れてくれれば、AEDで彼の蘇生ができたかもしれない……。
「おおっ、開いたぞ!」
「自由だ! 急いで逃げよう!」
ドアの裂け目から、患者たちの喜ぶ声が聞こえてきた。無邪気なもんだね……。

作品名:正常な世界にて 作家名:やまさん