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正常な世界にて

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 彼女の視線の先は、名大病院の屋上だ。その屋上では、ヘリコプターがちょうど離陸しようとしていた。白っぽいアレは、ドクターヘリだ。ケガ人を迎えに行くところだろうか? 119番通報が運よく繋がった人がいるのかもしれない。
 ……ところが、ヘリをよく見ると、着陸で使う足の部分に二人ぶら下がっている。定員オーバーで救急隊員がぶら下がっているわけでもない。いくらなんでも、そこまでブラックな職場ではないはずだもんね……。
「おいおい、まるでゾンビ映画だなぁ」
坂本君が言う通りだった。距離があるから、年齢も男女もわからないけど、二人の一般人が、ヘリの足にぶら下がっているのだ。よっぽど、ヘリにいる人が憎いんだろうね……。
 ヘリは、相乗り二人組に気がつかないのか、そのまま病院から移動し始めた。乱暴な操縦なので、気がついてる?
「危ない!」
片方が足から手を放し、病院の植栽の中に落ちた。もう片方も、手が疲れたのか、手を放す。
 だけど、そのもう片方は、植栽じゃなくて駐車車両の屋根に直撃した……。車の防犯アラームがうるさく鳴る。少しへこんだ屋根の上にいる人は、そのまま微動だにしない。植栽に落ちた人も無傷じゃなさそうだけど、どっちも目の前が病院だから、そのままでも大丈夫だと思う。うん、そう思うね。


 坂本ママは、車を救急外来の近くに乗り付けた。近くと言っても、救急外来の出入口から離れた場所だ。なにしろ、10台以上の救急車だけでなく、たくさんの一般車両が無理やり駐車していたからだ。
「こりゃ酷い。中も大混雑だろ……」
坂本君はうんざりしながら、坂本ママの降車を手伝う。人の世話が嫌なわけじゃないもんね。軽口や愚痴が無ければ、彼の評価はもっと上がるはずだ。
「とにかく行ってみましょ? 応急処置だけでも大丈夫そうだから」
「先に受付行ってきます!」
私もできることはやらなきゃね。
「いつまで待たせるんだ!? ぶつけるぞ!?」
「もうちょっと待って! 今呼び出してるからさ!」
救急車のドライバーと病院職員が口論している。救急車の前後を一般車両に挟まれていた。これじゃあ、ぶつけないと出られないね。私たちの車は、大丈夫な位置のはず。
 救急外来の自動ドアをくぐり終えた時、金属が潰れるような高い音が後ろから聞こえてきた……。今は緊急事態だ。多少の荒っぽさは、保険会社も黙認してくれるはず。

作品名:正常な世界にて 作家名:やまさん