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正常な世界にて

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 大きな水素爆発で、周囲は騒然となる。さっきの暴動よりかは、落ち着いた状況に見えちゃうけどね。
 いくつかの残骸や植え込みが燃えて、辺りを煙たくする。反対車線を走っていた車はかなり少なかったけど、それでも壊れて停まっている車が何台か見えた。こんな状況だと、消防車や救急車を呼ぶのは難しいから、自分で何とかしなきゃいけない。
「この辺の大きな病院だと名大病院だね。そこまで大丈夫?」
「大丈夫だって。でも、もしもの時は替わってね?」
「うん、わかった」
もちろん、坂本君は運転免許なんて持ってない……。思わずそれをツッコミかけたけど、今は無免許運転を気にするような自体じゃない。どうしても、法律に固執するなら、緊急避難という形だと理解すれば済む話だ。


 坂本ママは、車を渋滞の車列から脱出させた。車体をこする音とクラクションと怒声が何度も聞こえた気がするけど、あくまで気のせいということにしておこう……。
 抜け出せた後、車は反対車線に入る。わざわざ、危険な街の中心部へ向かう車は少ないので、反対車線は空いていた。燃える残骸に気をつければいい話だ。坂本ママの「裏技」に触発されたのか、何台かの車も、反対車線へ入り始める……。きっと、周囲によく流されるタイプの人なんだろうね。
 その一方で、おとなしく渋滞に巻き込まれている人たちは、私たちに冷たい視線を浴びせてくる。だけどこれは、坂本ママの治療のためだし、あのままだと暴動に巻き込まれるしれない。こんな非常事態に、法律の遵守をキープするなんて無理がある……。
 まあ、こんな時に、歩道にイスを置いてノンビリ座っている警官なんて皆無だろうけどね。警察に捕まらなければ、犯罪でも違反でもないのだ。

 対向車線の歩道で、救護の知識があるらしく、ケガ人の応急処置をして回る女性がいる。
「森村は119番通報を繰り返せばいい!」
彼の言葉を聞き、私はスマホで119番通報を繰り返す。電波状況は圏外のままだった……。そんな事は、坂本君も承知のはずだ。
 どうやら坂本君は、私が手伝いに向かうのを危惧したようだ。もしかすると、手伝いに向かっているかもしれない。しかし私は、彼の言葉を助け船にする形で、無駄な119番通報を繰り返している……。
 対向車がかなり少ない反対車線を走っていると、渋滞の原因がわかった。警官でもない暴徒たちが、道路で勝手に検問をやっていたのだ。
「自警団には見えないな」
坂本君が言うように、有志の住民が始めた自警団とは雰囲気が違った。物騒な感じがした……。

作品名:正常な世界にて 作家名:やまさん