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正常な世界にて

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「さて、話を戻すぞ。そのまま本部にいたら危険だった。どれだけの同僚が取り込まれてるか、わかったもんじゃないからな。私は一旦、もとの署に戻ることにした。……行きは大丈夫だったんだが、帰りはあっちこっち渋滞だ。警察官が出てたが、人数が全然足りない上に、誘導をシカトしまくる連中ばかりで、ちっとも進みゃしない。赤色灯をつけ、サイレンを鳴らしたが、それでも効果なし。いい度胸してるなとイラついたが、逮捕して回ってる余裕はなかった」
初老刑事は苦々しい顔で、グラスから一口飲む。普段なら、ブン殴って回っているのかな?
「よっぽど急いでいたのか、歩道を走り始めたバカがいた。猛スピードじゃないが、いつ跳ねてもおかしくない。そこで私はガマンできなくなり、そのバカ車を追いかけることにした。私のパトカーも歩道を走るわけだが、もちろんゆっくり慎重にだ。走りながら、バカ車に停車を呼びかけたが、それもシカト。まったくいい度胸してると、怒るどころか呆れたよ」
アクション映画のワンシーンを思い浮かべた私。とはいえ、もっとスリリングなワンシーンを何度も私は経験済みだったけど……。
「次の交差点で、そのバカ車は止まった。観念したのかと思ったが、なんと向こうの歩道から別のバカ車がやって来たから止まっただけだった……。交通整理の連中でさえ、この珍事に呆然していたぐらいだ。私はバカ車の後ろにパトカーを止めて、ソイツがこれ以上余計なことをしないよう塞いだよ」
ここまで話したところで、刑事の顔が険しくなった。眉間にシワが寄っている。バカ車のドライバーが、すごくハイレベルな人間だったのか、すごくバカだったのか、またはその両方だったのかな?
「交通整理の連中が、そのバカ車と話し始めた時だった……。左の道路から、陸上自衛隊のトラックが何台も走ってきたんだ。路肩だったが乱暴な走り方で、横の車やガードレールにぶつけながら走ってきた。しかも、スピードを全然落とさない……。止まれと叫んだが、それもシカトだ。トラックどもは、私の車やバカ車をブッ飛ばしただけじゃなく、警察官をプレスしやがった!」
ああ、今年も愛知県は、交通事故死者数ワースト一位に輝きそうだね。何年連続の記録なのかはわからないけど……。
「ひっくり返った車から這い出た頃には、トラックどもはもう走り去ってた。カバンと警察無線を車から取り出し、死んだ警察官から銃を回収しておいた。壊れた車からガソリンが漏れ出していたから、遺体はそこに置いてくしかなかったよ。ただそんな状況でも、呑気にスマホを構える連中がいた……」
ネットとともにSNSもダウンしてるのに、インスタ映えとは、ホントに呑気だね。まあ、私もつい撮ってしまうかもしれないけど。

作品名:正常な世界にて 作家名:やまさん