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正常な世界にて

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 その日の帰り道。私は坂本君とリセットの話をする。先日のクリスマス会では、高山さんとしっかり話をしたけれど、最近の放課後は別行動ばかりだ。人づてに聞いた話だと、どこかでバイトをしていて、忙しいんだとか。きっと、ろくなバイトじゃないだろう。もしかするとまた、惨劇を誘う文書の郵送でもしているのかもね……。

「リセットかぁ。そんな事がもし起きたら、そういう危険な状況に長けている人は得するだろうね」
「う〜ん、今の日本にそんな特殊な人はいるかな?」
「意外と発達障害者の中にはいそうだよ。過集中のスキルを持ってる人がいるぐらいだからさ」
「過集中?」
初めて聞く単語だ。集中のし過ぎという意味かな?
「ある物事にすごく集中できるけど、周囲の声かけに反応しなくなるぐらいの集中力なんだ」
だいたい当たったね。
「ぼくはサッカーでボールを蹴っているときに、過集中を起こしちゃうみたいなんだよね。チームメンバーの存在を忘れちゃうぐらいで、注意されちゃう……」
彼にとって、過集中はあまり良くないもののようだ。落ち込み気味の彼は珍しい。
 サッカーは一人でするスポーツじゃないから、味方と連携する上で、過集中は問題の元なんだろうね。今日のサッカー部練習をサボったのも、これが原因なのかもしれない。そうだとすれば、悲しい話だ……。
「森村は過集中ある?」
私は考える。過集中な時ねえ。
「危ない!」
坂本君に服の襟を勢いよく引っぱられる。
 私のすぐ目の前を大型トラックが通過していった……。20cmもない目の前をだ。もし坂本君に後ろに引っ張られなかったら、トラックの右前の角に吹っ飛ばされている。トラックのスピード的に死んでいた。仮に死んでいないとしても、私は発達障害の他に、身体障害を抱える事になるだろうね……。
「あ、ありがと」
「森村は、考え事に夢中になり過ぎるから、それが過集中なんだよきっと」
ヒヤヒヤさせられた事に怒っている口調だ。
 これは坂本君の言う通りかもしれない。この過集中のせいで、注意力がおろそかだった経験は、思い返せば何度もある。今回みたいに、道端で車に轢かれかけた事や、授業にちゃんと集中できなかった事などだ。

作品名:正常な世界にて 作家名:やまさん