正常な世界にて
「下の冷蔵庫に、手作りゼリーを人数分入れてあるから、それをみんな配って」
高山さん手作りかな? 念のため、クラスメートの調子を様子見してから食べよう。
私たちは部屋を後にし、階段をおりる。深刻かつ重い話をしたばかりだけど、今は高校生なりの平時に戻らねば。
キッチンの冷蔵庫に、高山さんお手製のゼリーが、ギッシリと整然と並べられていた。どれも綺麗に固まり、見事な艶を放つ。味はミックスフルーツ風らしい。
私と坂本君は、それらをクラスメートに配って回る。高山さん手作りだと伝えるなり、「凄い!」とかいう声が上がった。……なんて無邪気なんだ。
半分ほど配ったとき、高山さんがやって来た。両手それぞれに、スプーン入りのグラスが握られている。ゼリー用のスプーンだ。グラスにたくさん入っているから、ジャラジャラという音が鳴り響いている。
「最後はクジ引きね! スプーンに番号が振ってあるから一本ずつ選んで。クリスマスプレゼントが当たるかもよ?」
これ以上何か掴まされるのはイヤ……。
こうして、クリスマスパーティは終わりへ向かう。楽しいひとときも悲しいひとときも、いつかは終わるもの。