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正常な世界にて

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 ……彼女の要求を飲むしかない。今まで大目に見てもらったことに感謝しよう。そう思い込む事で、じくじたる思いを解消すればいい。しかし、
「高山さんたちは、なぜ殺人を起こしたりするの? 現状維持になっても、問題ないんじゃない?」
これは聞いておきたい事だ。
「……森村さんは世の中が、どんどん生きづらくなってると感じない?」
「生きづらさ? 少し昔と比べて、コミュニケーションを常に取らなくちゃいけない世の中になっているという話ならわかるけど……」
私の視線は自然と、ポケットのスマホへ向く。ラインやツイッターの事を考えれば、発信や受信で朝から晩まで忙しいという話は、テレビで聴いたことがあった。
「科学技術が急激に発展している感じはしない?」
「科学、技術?」
「生命に関してならわかるよ。遺伝子をいじくって、都合のいい赤ん坊を作るという話は聞いたことある」
坂本君が代わりに答えた。その手の話なら私も知ってる。
「私たちの組織は、急激な発展を喰い止めようと頑張っているよ」
世の中にブレーキをかける大義があるらしい。
 確かに、現代社会には生きづらさがあり、生命の冒涜に近い発展も遂げている。しかし、果たしてそれを簡単に止められるのだろうか? いくら高山さんの組織の力が強くても、限界があるんじゃ?
「森村さん、無理があると思ってるでしょ?」
顔に自然と出ていたらしい。
「私も正直、最初は無理な話と思ってた。だけど、計画について細かく教えてもらい、可能だと理解できたよ」
私もそれを知りたくなった。しかし高山さんが、それはダメだと表情で伝えてきた。とてもわかりやすくね。
「そう遠くない頃に、どんな計画なのか自然とわかるから」
計画は最終段階に入っているような口ぶりだ。時すでに遅し。
 ここで私は、Iから先日教えてもらった「リセット」の話を思い出した。高山さんの話と辻褄が合う。彼女たちはリセットを行なう計画なんだ。
 これが映画なら、私がギリギリで計画を崩壊に導く展開が、この後待ち受けている。しかし、そんな勇気は持ち合わせていないし、そこまでやりたくない。
 ……そもそも、高山さんが私たちに話した点で察する。おそらくきっと、計画は高山さんの立場でも、手の届かない位置に到達しているに違いない。詰んでるんだ。

作品名:正常な世界にて 作家名:やまさん