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正常な世界にて

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【第2章】



 次の駅で降ろされた私と高山さんは、ホームで警察の到着を待つ。誰かが非常ボタンを押し、違う誰かが通報してくれたおかげだ。
 あの騒動後に車掌がきて、無職男や目撃者数人と共に降りる流れに。きっと、事の詳細を改めて説明しなきゃいけない。
 無職男は駅員たちに両脇を掴まれ、おとなしく座りこんでいる。高山さんにキツく言われたショックもあり、落胆してるようにも。

「どーもお待たせしましたー」
やってきた警察官は中年男性で、メガネのバランスを整えながら見回す。
「話はだいたい聞きました。そこに座っている彼が、問題を起こしたんですね?」
「ええ、そうです。こちらのお嬢さんがおとなしくさせてくれました」
駅員が警官に説明する。高山さんは運動部の女子高校生でもないため、警官は無邪気に驚いていた。
「えー、ご協力に感謝します。けど危ないことしちゃいけないよ?」
感謝に添えられた、ありがたく余計な忠告。
「危ない? 誰も助けてくれなかったからですよ!」
忠告が気に障ったらしい彼女は、きつめに言い返してやる。
「そ、そうなの?」
言い返されてしまうと思っていなかったらしく、警官は戸惑いを隠せない。
 事実助けてくれなかった目撃者たちは、気まずそうに顔を伏せている。ただ私だって逃げようとしていたから、彼らを責められない。
「……念のためだけど、身元証明をお願いできるかな? 生徒手帳を見せてほしいんだけど」
彼女に生徒手帳の掲示を求める警官。
 制服姿でどこの高校なのかはわかるはず。しかし、杓子定規的にきちんと確認しておきたいらしい。

「これでいいですか?」
高山さんが見せたのは、生徒手帳ではなくあの精神障害者手帳だ……。小さな緑色の手帳を開き、氏名や住所だけじゃなく、一級という等級が記されたページを見せている。
「……あっ」
警官は何か察した様子。
「ご、ご協力を感謝します……。もう帰ってくださって大丈夫です……」
消え去る声でそう言うと、無職男のほうへ近づいていく。事なかれ主義が作用し、私たちの相手をするのを止めたらしい。

作品名:正常な世界にて 作家名:やまさん