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正常な世界にて

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 私は坂本君の手を振り払った。
「高山さんを敵に回すだけって……。だけど、このままスルーするわけにはいかないじゃん!?」
彼にそう言うしかなかった。
「……言っておくけど、『事なかれ主義』というだけじゃ済まないレベルだからね? ここはスルーするしかないんだよ!」
私の非難を予想してか、彼はそう言った。けど、事なかれ主義以外のいったい何だと言うんだろう。
「もし警察が彼女を逮捕したとしても、彼女の仲間が何かしてくるよきっと? ぼくもまだよくわからないけど、彼女がいる組織がさ!」

 危うく撃ち殺されるところだ、先日の出来事を思い出した私。あんな大事件があったのに、世間では結局あまり騒がれずに忘れ去られた。私と坂本君が、警察にまた聞き取りされる事も無かったぐらいだ。
 とはいえ、街中に監視カメラがあるから、私と坂本君の面相などは、警察やその組織にもとっくに割れているはず。だから、いつでも手出しされてしまうわけだ。今は泳がしてもらっているだけで、高山さん逮捕をきっかけとして、襲いかかってくる事は十二分に考えられる……。
 あのときは、二人の刑事さんがいたから、二丁拳銃持ちの少女に襲われても大丈夫だった。その後で狙撃されまくった際は、障害者手帳を見せて、なんとか逃げおおせた。半分は事実だけど、高山さんの仲間だと思わせたわけだ。
 しかし、高山さん逮捕となれば、もう仲間じゃなくて、敵として扱われる。あの銃撃をかいくぐって逃走できる自信なんて無い……よ。

「下手すれば、彼女自身が仕返ししてくるよ。生命保険に入るなら、今のうちにしとかないとね。……もう入れないかもだけど」
坂本君は言った。彼は苦笑いを浮かべつつ、深いため息をついた。
「……何年後かまでに、行方をなんとかくらませないとね」
私はそう言ったものの、彼女の報復から逃げ切れる自信も無かった。
「何年後かだって? 女性割引と家族割引もされるから、もっと短く済むだろうね。きっと一ヶ月も経たないうちに、高山は高校生活再デビューを果たすさ」
いくらなんでもそれはオーバーだと思うけど……。
「たった数日でも意味はあるよ。一通り捜査されれば、真実が多少でもわかるはずだし」
儚い希望だけど、期待していいはずだ。そのために消費税を払っている。

作品名:正常な世界にて 作家名:やまさん