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正常な世界にて

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 乾杯ラッシュが一段落した頃、お待ちかねの食事タイムに突入した。一人目がテーブルに着き、一口目を口を運ぶなり、他の全員が続く流れ。
 クラス全員が、テーブルの食事をワイルドにガツガツと食べ始めた……。下品な光景とまでにはいかないけど、上品さは皆無な光景だ。親や先生に見せられる食べ方じゃない。
 フライドチキンで両手がベタベタと油まみれになるのは仕方ない。だけど、ハムスターのように口一杯で食べまくるのは、健康面でもマズイ。
 ……とはいえ私も、あまりの美味しさに、家での食事よりは品の無い食べ方をしてしまっている。母ならしつこく注意してくるに違いない。

 少し経ち、主役のクリスマスケーキが登場した! 当然、ワイルド以上下品未満な場は、さらにヒートアップする。立派なダイニングルームに相応しい大きさで、純白のクリームで美しく形作られたデコレーションケーキだ。結婚式のそれと劣らない。
「それそれ〜!」
「ちょっと! イチゴ取り過ぎ!」
「手にクリームつけんなよ!」
争奪戦が始まる。アメリカのブラックフライデーの賑わいは、壮絶かつエキサイティングなのはお馴染みだけど、ちょうどアレを日本バージョンにした感じだった……。
 飛び散るバタークリーム、コロコロ転がるイチゴ。テーブルだけでなく、絨毯敷きの床まで汚れていく。ここはどこかのレストランじゃなくて、クラスメートの家なのに、この汚しっぷりはマズイマズイ!
 思わず私は、この家の住人である高山さんのほうを見る。殺気ムンムンの危険性が高いのにだ……。

「…………」
高山さんは無言で突っ立っている。彼女の表情は、微笑み一割という調子だけど、殺気や怒りは感じ取れない。つまみ食いラッシュ時は確かに怒ってたけど……。
 今は違うとはいえ、楽しく愉快な感じじゃないことは、経験上承知している。水が一気に熱湯と化すような急沸騰が、いつ起きても不思議じゃない。
「ちょっとちょっと! 絨毯に染みができたら嫌だし、少し落ち着いてくれない? 全員分は余裕であるんだからさ?」
高山さんは、一同に言う。それは、怒りに任せた喋り方ではなくて、注意や諭しといった具合の緩やかな口調だ。だけど、私には「警告」にしか聞こえない。高山さんの怒りゲージが黄色信号だと察する。
 幸いなことに、クラスメート一同もそれを察してくれたらしく、喧騒はかなり静まる。似た雰囲気は、高校の昼休みに全員が昼食を取ってる頃のそれ。私にはちょうどいい感じの賑わいだ。

作品名:正常な世界にて 作家名:やまさん