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正常な世界にて

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 地下鉄駅から地上へ出た私と坂本君。すぐ近くの交差点一帯は、比較的穏やかな喧騒で、普段と変わりなかった。まだ地下鉄での惨事は伝わっていないらしい。だけどもう少しすると、パトカーや救急車で、この交差点は混乱に陥るはずだ。帰りがバスのクラスメートがいたら、渋滞に巻き込まれて大変だろうね……。

 交差点や通りを離れ、高山さんの家もある住宅街へ入る。ここら辺一帯は、豪華な一戸建てがビッシリと建ち並ぶ高級住宅街だ。昭和区は古臭い所だけど、何かと喧騒が付き物の地上駅が無いこともあって、静かで落ち着いた感じの高級住宅街が多い。まあ買い物では、不便かつ不経済に苦しめられているという。これは、高山さんが以前話していたことだ。
「栄のトラック暴走のことだけどさ。ああいう事件は、こういう所で起こしてほしかったよねー。みんなにお金が行き渡るから、景気対策にもなるだろうしさ」
坂本君がまた、とんでもないことを言い出したよ……。そりゃあ、消費する人数が増えるから、景気対策にはなるけど。
「いくらトラックでも、こんな高い壁は壊せないでしょ? 門は頑丈そうだし」
他の話題は浮かばなかったので、彼の話に付き合うことにした私。男を立てる立派な女だねうん。
「何も絶対壊さなきゃいけないわけじゃないじゃん? 中に入れて、中の人をなんとかしちゃえば解決する話なんだからさ?」
「まあそうだけど……。でも、カメラもあるし、警報が鳴れば、警備員とかが来るんじゃない?」
すぐそこの立派な家の門にも、監視カメラが設置され、警備会社のシールが貼ってあるぐらいだ。物々しさを感じちゃうね。
「高い壁はいざという時に逃げられなくなる。セキュリティーシステムは、停電すれば全滅。もちろん、防犯カメラもね」
「停電が起きれば、それこそ警備員が来るじゃん?」
ウチのマンションにも、ときどき警備員が来ている。ブレーカーが落ちると、マンションの警報が作動してしまうのだ。
「いざというときに、警備員が役に立つと思う? ついこのあいだも、キチガイの底辺男一人をなんとかできなかったろ?」
ああ、仲間割れみたいな嫌な事件だったね。
「それなら、守りに徹するしかないのかな? パニックルームとかいう部屋にこもってさ」
「それが一番現実的だろうね。だけど、核シェルターみたいなガッチリとした場所じゃないと、放火されたらゲームオーバーだけど」
「ただ、家を荒らされちゃうのはツライよね……」
「強盗対策に保険がかけてあるはずだから、実際の損害は少しで済むさ。それに、盗まれるのは金目の物ばかりで、アルバムとかをわざわざ盗むやつはいないって」
それもそうだね。有名人の物ならともかく、重い卒業アルバムを盗んでも売れないだろうから……。

作品名:正常な世界にて 作家名:やまさん