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正常な世界にて

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  朝礼が終わり、一時間目の授業が始まった。しかし、私の興味の先は、黒板じゃなくて、スマホの画面にある……。ラインが起動済みで、このクラスのグループラインが表示されている。
 今の話題はもちろん、高山さん主催のクリスマスパーティについてだ。彼女の説明や招待カードを見聞きしたクラスメートが、授業中にも関わらずに、こうして盛り上がっているわけだ。とはいえ、この授業の先生(担任ではない)は、『静かにしているならスマホOK』というスタイルだから、没収の心配はないけどね。
 ちなみにこのグループラインは、場面緘黙症の女子(坂本君が教えてくれた)も参加している正式なものだ。入学式の日に、高山さんが開いた。今さらだけど、彼女の行動力は、坂本君よりもあるね。

 ラインの流れや送り状を見ながら、この怪しいクリスマスパーティに、私自身も参加するべきかと悩む。面倒事に巻き込まれる危険性は高い。だけど正直に言うと、好奇心が私の中にまだ残っている。こんなことは坂本君には言えないけどね。
 ……そう思い悩んでいるところへ、坂本君が参加表明のメッセージを、グループラインに投稿した……。それもシンプルで事務的なものではなく、絵文字付きのノリノリなものだ。ひょっとして彼は、高山さんの陰謀や私を守ることを、忘れてしまっているんじゃないかと思えてくる……。
「呑気だね……」
思わずそうつぶやいた私。
 彼が参加するため、自分も参加することにした。寂しくもなるだろうし、不安にもなるからね。パーティは昼間だけだし、他のクラスメートもいっしょだから、大丈夫かもしれない。よく思い返せば、彼女主催のイベントは、今までにも何度かあった。運動会や文化祭の打ち上げ会だ。今回も何事も起きずに、終わる可能性だって、十分にあるというわけだ。自分を安心させるためとはいえ、それを願うことにした私。
 ただ念のため、坂本君に行き帰りのエスコートを頼むことにした。クラスメートに目撃されまくりで恥ずかしいだろうけど、安全には代えられないからね。
 私は、参加表明をグループラインに流した。既読数が着々と増えていく。


 その日の終礼後に、高山さんが嬉しそうに発表したところによると、なんとクラスの全員(例外無し)が、クリスマスパーティに参加することになったそうだ。用事がある人もいただろうけど、どうやって参加させたのかは、あまり考えたくないね……。
 パーティの日が、とても待ち遠しくなった。楽しみだからじゃなくて、さっさと済ませたいという気持ちからだ……。とはいえ、こういう場合に限って、日にちが経つのを早く感じるものだね。

作品名:正常な世界にて 作家名:やまさん