正常な世界にて
キィー
そのとき、ドアが静かに開いた。私たちもしたような普通の開き方だけど、なぜか不気味な感じに聞こえた。
「あらあら? いかにも意味ありげな組み合わせじゃない?」
ドアを開けた人物が、冷たい口調でそう言った。
そこに立っていたのは、私よりも1つか2つ年下の少女だった。服装は、私よりも派手な色合いの私服で、この暗雲めいた場ではさらに目立っている。ミニスカートとニーソックスによる絶対領域のおかげで、小柄ながらも可愛い。
「こいつらの友達か? それなら少し話を聞かせてもらうぞ?」
ズボンからメモ帳を取り出す初老刑事。
いやこの少女は、友達でも恋敵でもなんでもない。学校やこの仕事場で見かけたこともなく、完全に初対面の女の子だ……。
「友達? 全然違うんだけど?」
少女はそう言うと、ミニスカートの中を両手で探り始めた……。両足の太ももに何かを隠し持っているようだけど、ミニスカートの左右の裾を持ち上げたため、パンツが見えそうだ……。
「おおっ!」
坂本君が嬉しそうな声を上げたため、私は彼を睨みつける。
「悪いけど、見えないようにするコツはあるのよ?」
彼女はそう言った後、ミニスカートからお目当ての物を取り出してみせた。
彼女の両手には、同じ黒いピストルがそれぞれ握られていた。小柄な彼女でも扱えそうな大きさだ。名前はわからないけど、ガッチリとした雰囲気を漂わせている……。
「おいこら!! それはおもちゃじゃないだろ!!」
身構える初老刑事。どうやら本物らしい。どうやら、今度の災厄の主役は、二丁ピストル使いの美少女というわけだね……。そのまんまだけど、『ガンガール』と名付けよう。
とはいえ、チェーンソー男に襲われたことのある身だから、危機感はなかなか湧いてこない。これは「異常」ではなく、「正常」な状況に思えるよ……。
「さすが、すぐにわかるんだね!」
彼女は感嘆しつつ、両手のピストルを初老刑事に向ける。冗談ではなく本気の構え方なのは、彼女が殺気をムンムンと放っているからだ。私たち全員を殺す予定なんだろう。