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連載小説「六連星(むつらぼし)」第71話~75話

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連載小説「六連星(むつらぼし)」第75話
「福島原発の、56(ごろく)ER」

 苦みの強い無糖のコーヒーを、呑み終えた杉原医師が、
缶コーヒーを握りしめたまま、響の正面にどっかりと腰を下ろす。


 「君は、正義感の強いお嬢さんだね。
 君に限らず医療の世界にも、正義感の強い人たちが沢山いる。
 何事も事なかれで、余計なことには関わりたくない連中が多い中、
 原発病の治療にため、立ちあがっている人たちも多数いる。
 原発労働者たちの医療活動に、先進的に取り組んできた人たちも
 そこそこ居る。
 これまでに、いくつかの貴重な研究例が残されてきた。
 だがそのための研究費用や治療費などを、国は一切認めようとしない。
 当たり前だ。
 この世に存在しないはずの原発の病気を、公にしょうというのだから、
 原発を容認する政府にしてみれば、迷惑この上ない話だ。
 国が認めず、電力会社がいくらもみ消しを図ろうとも、
 多くの原発労働者がたちが、被曝によって健康を損なっているのは事実だ。
 ある大学教授は、長い時間をかけて膨大なデータ―集めに奔走している。
 しかしこうした活動は、あくまでもごく一部だ。
 日本の原発は自らを維持するために、都合の悪いことには
 常に蓋をするからね。
 ひたすら安全性だけを、高らかに吹聴する。
 ゆえに原発労働者の中で、最下位に置かれている日雇いの労働者たちは
 ボロ雑巾のように、常に使い捨てにされていく運命になる・・・・
 それもまた原発の50年にわたる、歴史の事実だ」