連載小説「六連星(むつらぼし)」第71話~75話
連載小説「六連星(むつらぼし)」第74話
「50年の壁」
夜が明けた。山本は高度治療室から一般病棟へ移された。
一晩付き添ってきた俊彦と入れ替わるため、今日も二部式の着物を着た響が
病院へやって来た。
廊下で禁煙パイプをくわえた杉原医師と、ばったりと出あう。
「トシんところの大和なでしこか。今日も綺麗だな・・・・ご苦労さん。
お前さんは、本当に着物が良く似合う。
こうして見るとお前さんは、若い頃のお母さんよりも美人だなぁ。
ん・・・・。どうした。そんな怖い目で俺を見て。
何か気に障る事でも言ったかな・・・最大限に褒めたつもりだがなぁ俺は。
いったいどうした。響ちゃん」
「褒められて、気分を害する女性なんて、いくら探しても、
この世の中に絶対いません。
私の目が真剣なのは、本当のことを教えてもらいたいからです!。
私は山本さんの病状を知りたいのです。
原爆病に詳しい杉原先生なら山本さんを治療するのは、簡単ですょね」
作品名:連載小説「六連星(むつらぼし)」第71話~75話 作家名:落合順平